『半信半疑で読む 子育てアドバイス』<3後編>

<第3回>
ほめることについて<前編> につづきます

乳幼児教育にはさまざまな要素がありますが、その中で最も大切にされるべき要素こそ自尊感情・自己肯定感の育成といわれています。
自尊感情・自己肯定感とは何でしょう。
読んで字のごとくです。「自分は大切な存在なのだ」「自分は自分のままで、まわりから受け入れられている存在なのだ」「ありのままで愛されている大切な存在だ」
という意識です。この意識が乳幼児期に十分に育っていることにより、
その後、その子の人生が前向きに動き出し、良好な人間関係を保ち、学習意欲も高く、理解力もついていくと考えられます。
結果として、社会の良き成員(大人)として成長し、結果として良き納税者になるという図式が成立すると考えられています。

逆に、乳幼児期に自尊感情・自己肯定感が十分に育っていない子は、人間関係がうまくいかない。
暴力をふるう。学習意欲が低い。自分で判断が出来ないなどの問題につながり、挫折に弱く、できない自分が許せない。
生きている価値がないと考えてしまう。また、自分より劣っていると思われる他者に対しては攻撃的になったりするとも考えられます。
このような意味で、乳幼児期に自尊感情・自己肯定感を育んであげることは、子どものその後の人生にとって、
大人が意識しているよりもはるかに大切な課題なのです。
この自尊感情・自己肯定感を子どもたちに獲得させていくうえで欠かせないものが、乳幼児期における
褒められる
という体験なのです。

 

最初の話に戻りますが、H先生に褒められた〇〇ちゃんは、おそらく、
それまで何度も便器にすわって挑戦していたはずです。何度もできなかった。
そのたびに先生たちから「今度また頑張ろうね」とやさしく声を掛けられていたと思います。
出来てもできなくても、受け入れられている感覚を持っていた。
そんな○○ちゃんが、その日はじめてトイレに座ってウンチができました。
先生たちがみんな集まってきて褒めてくれました。
一歳児の○○ちゃんですから、満面の笑みという事はないと思います。
まだ、おしゃべりもうまくはできません。しかし、何か「すごい」という感覚がわいていたはずです。

温かい雰囲気の中で、みんなから大切にされているという環境の中で、
新しくできることがまた一つ増え、それをみんなが喜んでくれる。
そのことにより、自尊感情・自己肯定感がはぐくまれていきます。こうして生きる力の土台が形成されていくのです。

 

褒めてあげるチャンスは、平凡な生活の場面ばめんに、たくさん転がっています。
「できたね」「よかったね」「がんばったね」「うれしかったね」「すごいね」「やったね」
・・・短い言葉で結構です。たくさん褒めてあげましょう。

 

褒め方についてのワンポイントアドバイス につづく